ソニーグループ株式会社 法務部 通商グループ 金野紗雪さんへのインタビュー

INTERVIEW

ソニーグループ株式会社 法務部 通商グループ 金野紗雪さんへのインタビュー

2023年9月1日、ソニーグループ株式会社にて、法務部 通商グループの金野紗雪さんにインタビューをさせていただきました。まず、今回のこのインタビューをお受けいただいた金野さんに心より御礼申し上げます。またインタビューを通して、金野さんの素直で明るい性格、そして真っすぐに前を向いて歩み、自らの仕事に向き合っているであろうという強い印象を受け、素晴らしい人材であると感じました。
NPO法人16歳の仕事塾は2009年に設立し、活動を始めて今年でちょうど15期になります。活動内容は学校のカリキュラムの一環として、社会人による授業やワークショップを実施しています。第一線で活躍する社会人に「仕事」や「働くこと」についてお話しいただくことで、高校生に将来を考えるきっかけやヒントを与えたいと思い活動を続けています。
その効果測定として、2019年には都立高校8校、生徒2,233名に対しアンケート調査をしました。授業の前後に同じ生徒に同じ質問をしたところ、授業後は例えば「仕事は面白いものだ」が213%、「仕事は熱中できるものだ」が210%と飛躍的に伸びる結果となりました。このようにこれまで授業の前後の調査による効果は得ることができましたが、受講した生徒がその後どのような進路を選んだのか、また数年後その生徒が職業選択をする際に私たちの活動がどれくらい影響があったのかは、調査できなかったというのが正直なところです。
ところが、数年前に成城学園高校1年のときに受講した生徒のその後について知ることができました。その生徒は今回インタビューをさせていただいた金野紗雪さん、講師が、ソニー・コンピュータサイエンス研究所に当時所属していた吉村司さんです。成城学園高校は、毎年8名の社会人講師を高校に招き、授業をされています。生徒はその中から希望する講師の授業を選択し、受講します。つまり金野さんは、その8名の中から吉村さんを選択して受講し、その授業で聞いた事業内容に感銘を受け、大学卒業後にソニーグループに入社したのです。これほどストレートな影響があった具体的な事例はこれまで知ることができなかったので、16歳の仕事塾として、ぜひお話を伺いたいとお願いし、代表である私(堀部伸二)がインタビューをさせていただきました。以下がそのインタビューの内容です。

ソニーグループ株式会社
法務部 通商グループ
金野紗雪さん

●ソニーでどのようなお仕事をされてますか?

『ソニーの製品や技術、サービスを適法に世界中のお客さまにお届けするための仕事です。輸出入規制を遵守するための社内体制を構築・維持する業務や、FTAなどの経済連携協定を活用し関税支払額を削減することで、ソニーの利益拡大に貢献する業務に携わっています。
グローバル企業であるソニーグループで、輸出入の法律に関わる仕事を通して、ソニーの利益だけでなく「ブランドを守る」ことにも貢献するという、大変重要な仕事をされているのだと思いました。

●成城学園ご出身と伺ってますが、当時はどのような中高生でしたか?

『中学でバトントワリング、そして高校ではチア部に入り、文化祭での公演や大会に向けた練習に励んだり、観ている方に楽しんでもらえる工夫を考えたり、部活に一生懸命だった生徒でした。もともと英語が苦手だったのですが、高校生になって将来が身近になってからスイッチが入り頑張って勉強をしました。今の仕事は英語を使うことも多いので、今に活きていると思います。』
お話の中で、「実は、私ポンコツだったんです」と明るく話されましたが、成城学園の生徒らしく、明るく伸び伸びとした学校生活を送られたのだろうと感じました。また、おそらく高校生になって成績もぐんと伸びたのではないかと思いました。

●吉村司さんが講師の授業を受けられましたが、受講してどのように感じましたか?
また自分もソニーグループに行きたいと思ったポイントは何ですか?

『小さい頃から理科が好きで、技術やモノづくりが大好きでした。ただ数学や化学が苦手で国語が好きだったということもあり、自分は文系の方が合っていると思っていました。その高1でちょうど文理選択を悩んでいたときに吉村さんのお話を聞くことができました。吉村さんは文系の専攻でしたが、ソニーの研究所でお仕事をされていました。そして文系でも理系の仕事ができるとお話しされたことが、今でも強く印象に残っています。自分の強み(文系)を活かして、興味あるモノづくりや技術に関わることができる、やりたい仕事に繋がると分かり、自らの将来が少し明るく感じられました。吉村さんの授業で、アフリカでサッカーの国際大会のパブリックビューイングを行い、大型スクリーンで試合の映像を映し、テレビ普及率が低く自国の応援が難しい人々に楽しんでもらった話を聞きました。また当時現地ではHIV/エイズの感染が社会問題になっていましたが、国際機関と連携し、試合を見に来た方々に啓発活動やカウンセリングを実施されたそうです。そのように自社の技術を使い、人々に感動を届け、かつ社会に貢献しながら自社のブランド価値の向上につなげる、そんな素敵な仕事、素晴らしい企業があるんだと驚きました。さらに吉村さんが、イキイキと話されていたのも印象的で憧れを抱きました。』
これほど高校生の時の吉村さんの授業を鮮明に覚えていらっしゃることに驚きました。またストーリーの記憶もほぼ完ぺきでした。高1のちょうど文系理系選択で悩んでいた時に受講いただき、私も本当に良かったと思います。

●上智大学法学部をご卒業され、ソニーグループに入社された経緯をお教えください

『法学部を選択したのは、幼い頃に見た弁護士のドラマなどで法律に興味を持ったほか、ディベートや、トロッコ問題などの「正義とは何か?」を考える分野にも興味を持ったためでした。そして就職活動の時期になったとき、周りには法曹界に行く学生ももちろん多かったのですが、自分は学んだ法学の知識をビジネスに活かすことを選択することにしました。志望する会社は、多様な事業を持っていて、かつもともと好きだったモノづくりに関われるような会社に絞ることにしました。その後、企業説明会で紹介された「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というPurpose(存在意義)に共感し、また高校時代に聞いた吉村さんのお話も思い出し、ソニーグループへ入社したいと強く思い、実現することができました。』
16歳の仕事塾としては、大学の就職段階になって高校時代のセミナーを思い出してくれるというのは、まさに仕事冥利につきます。

●ソニーグループに入社していかがですか?

『入社して3年になりますが、よりソニーが好きになりました。また様々な場や機会で、社員がソニーを好きになる工夫がされているように思います。社内のイントラを通じて、新しく始めた取り組みを見たり、社員食堂などで流れているグループのアーティストや、エンジニアのインタビュー映像を見て、自分が法学の知識を使って会社に貢献できていることを感じ、モチベーションが上がります。今では、テレワークが定着している企業が多いですが、ソニーグループはコロナ禍より前からテレワークを導入していたため、すんなり新しい働き方に移行したと聞いています。それぞれ自分のスタイルに合わせて働けるような仕組みが整っていると感じます。入社していろいろな場面で感動し、入社前とイメージ通り、いやイメージ以上と言っても過言ではありません。』
他の企業ではあまり聞かないような、入社3年目にして自分が勤める会社が好きだと宣言する社員を目の前にして、驚きました。

●「16歳の仕事塾」の活動に対して、どのように思いますか?

『とても感謝しています。高校時代に吉村さんのセミナーを受講しなかったら、ソニーグループに関心を持つ機会もなかったかもしれません。文理選択を悩んでいたときに自分の方向性を決めるきっかけにもなりました。「文系専攻でも理系の仕事ができる」という吉村さんのメッセージで自分の進路を決めることができました。家族以外にキャリアの話を聞くことがなかったので、いろいろな社会人の話を聞くことで、キャリア選択の幅が広がります。ぜひ今後もこのような活動を続けていただきたいと思います。』

●高校生へのメッセージをお願いします

『今私自身は、ソニーグループという入りたかった会社で、やりたい仕事をしています。自分にはとてもマッチしていると感じています。なぜそうなれたかを考えると、学生時代に軸を持つことができたからだと思います。軸を作るためには、アルバイトや部活、学生団体での活動など、様々な経験が必要だと思います。私もいろいろな活動、そして役割を通して、自分は何に向いているかなどの自己分析ができました。だから今、マッチした仕事ができているのだと思います。そのため、高校生からいろいろな活動、役割にチャレンジしてほしいです。そうすることで、自分の適性も分かるようになると思います。』

●最後に講師の吉村さんへのメッセージは何かありますか?

『吉村さんは、私にとってソニーに入るきっかけになった方です。ソニーのPurposeを、高校生だった私にイキイキと見せてくださいました。感謝しかありません。』

インタビューを終えたあとの、この晴れやかな感じはどこからくるのだろうと思いました。なにより金野さんが素晴らしい方であったことや、また活動の効果が素晴らしい結果として確かめられたということもあるでしょう。しかし、そういった直接的なことだけでなく、16歳の仕事塾創業時、内閣府の「地方の元気再生事業」を受託した時、内閣府に出向いてプレゼンした「人材育成の循環型社会を創りたい」という一つのカタチを、吉村さん、金野さんを通して見せてもらえたからではないだろうか。学校の先生以外の大人が子供たちに関わり、仕事や働くことについて語り教え、またその生徒が育ち次の世代の子供たちに教えるという、人材の循環型社会の実現へ、わずかですが光明が見えたような気がしました。
改めて、金野さんに御礼申し上げます。

インタビュアー: NPO法人16歳の仕事塾 理事長 堀部伸二